東京高等裁判所 昭和39年(う)2036号 判決 1965年6月07日
主文
本件各控訴を棄却する。
当審における訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。
理由
一、昭和三九年一一月四日付控訴趣意書の第一および同月一二日付控訴趣意書の第三について。
論旨は、いずれも、原判示成光学園児寮はいまだ建造物とはいえず、刑法第二六一条に規定するいわゆる器物の範囲をいでないものであるにかかわらず、これを建造物に当るとして被告人の本件所為を建造為損壊罪に問擬した原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の解釈適用を誤まつた違法があるというのである。
よつて按ずるに、原判決挙示の各証拠、とりわけ田口武一作成の鑑定書および原審の検証調書によると、原判示財団法人座間農場付設養護施設成光学園の児童寮軽量鉄骨二階建物一棟建坪延約一六八坪は、いまだ完成していなかつたとはいえ、本件犯行当時すでに基礎工事および鉄骨組立工事を完了したうえ、屋根コンクリート打ちを完了し、屋根アスフアルト防水工事をほぼ完了し、二階根太部分のコンクリート打ち、二階コンクリート床版下地木毛板敷並べおよび二階コンクリート床版用鉄筋工事をそれぞれ完了し、そのほか窓出入口スチールサツシユの取付けおよび間仕切ブロツク積み工事の施行中であつたことがうかがわれるところ、刑法第二六〇条にいう「建造物」とは、壁または柱で支えられた屋根を持つ工作物であつて、土地に定着し、少くともその内部に人の出入りできるものを指称すると解されるから、右の児童寮は、未完成ではあるが、同条の建造物といえる程度には完成していたことがきわめて明白であり、所論は独自の見解に基いて原判決を非難するものであつて、原判決には所論のような法令の解釈適用を誤つた違法はない。論旨は理由がない。(その余の判決理由は省略する)(松本勝夫 海部安昌 横田安弘)